2010年に見た映画

今年は、現時点で、29本の映画を見ました。

劇場で見たのは9本。ランキングを付けるなら

1.スプリング・フィーバー
2.ナイト&デイ
3.アバター

もっと、映画館で映画を見たいですね。500円やったらもっと見に行くのにw

一位の『スプリング・フィーバー』は、ひどく悲しくなる映画なのですが、見終わった後に、いつまでもその悲しさ(というより孤独感)を愛でていたくなるような、貴重な映画です。ロウ・イエという中国人監督の映画です。ロウ・イエは、天安門事件に関する映画を撮ったため、中国国内での映画撮影が当局によって禁止されていたのですが、極秘裏にハンディカムで撮影を断行して、本作を取りました。
南京の街で、同性愛者をめぐるラブ・ストーリーをハンディカムで撮る、という驚くべき企画なのですが、そのせいか、生活臭とリアリティに溢れた充実したものになりました。ラブ・ストーリーの多くが、「運命」を描くのであれば、本作で描かれているのはそれと正反対のもの、すなわち、未決定な恋愛です。恋愛とは到底呼び得ないような恋愛。孤独でありながら、そして孤独であろうとし、さらに、孤独でしかないなかでの恋愛。そのようなものが、描かれているように思いました。

他に、面白かったのは、『ナイト&デイ』。純粋にエンターテイメントを炸裂させているのですが、それが「本気」なのではなくて、上海アクションにあるような「ありえなさ」を、ありえないままに見せているという映画になっています。終始、映画を見ながら、トム・クルーズのありえないアクションや、途方も無いストーリーににやにやさせられます。良い意味で、本当にB級だと思います。特にアメリカ的な正義をかざして撮られるハリウッド超大作にはない、面白みがあります。
B級作品といえば、不可思議なSF映画第9地区」も素晴らしかったですね。もちろん、本年の超大作もので言えば「アバター」にも触れておかねばならないのですが、これはぜひ「第9地区」と「アバター」を横断するようにして、見て欲しい。「アバター」が異星人に同化しようとする作品であれば、「第9地区」は異星人に同化されてしまった一人の人間の話しです。これだけ言うと陳腐な正対称なのですが、「アバター」が徹底してリアリティが薄められた映画なのだとしたら、「第9地区」は肉体的なリアリティを保とうとするスプラッターチックな映画です。

新作では、ほかに、「インビクタス」、「告白」、「アリエッティ」、「エル・ポト」(これは新作では無いですが)、「月に囚われた男」を見ました。「告白」は僕にはどうもピンときませんでした。「インビクタス」は、イーストウッドにしてはまあまあという感じ。

新作ではなくて、レンタルで見たものをランキングにしてみましょう。

1.パブリック・エネミーズ
2.ライフ・アクアティック
3.ノー・カントリー
4.デス・プルーフ
5.ことの次第

パブリック・エネミーズ」は、「コラテラル」のマイケル・マン監督の映画です。マイケル・マンは、ハードボイルドというか、男社会というか、なにしろ、男臭い映画を撮る人です。「コラテラル」を高校生の時に彼女と見にいって、その良さが全然理解されない、ということもありました(彼女は、「ラスト・サムライ」でなぜか泣いていました)。本作では、ジョニー・デップが、「大衆の敵」と警察に名指されながら、大衆からは絶大な人気があった銀行強盗の役を演じています。
ハード・ボイルドといえば、僕にもいくつか思いつきますが(「チャイナタウン」はすごくお勧め)、その定義を敢えて僕流にして見るならば、「絶対に負けるとわかっている勝負であっても、敢えて自分のポリシーとしてそこに挑み、実際に精根尽き果てる美学」みたいなものでしょうか。これが「男臭く」なくてなんでしょうか。最後に、デップが恋人に贈る手紙が泣かせます。
2の「ライフ・アクアティック」は、僕が近年愛してやまないウェス・アンダーソンのもの。彼は映画と音楽とコメディと悲哀を織り交ぜる天才だと信じますが、特に本作は細部への作りこみが著しく、それだけで楽しめます。ハード・ボイルドを上記のように定義したとして、しかし、その定義は、撮り方しだい、物語しだいで、あっさり「コメディ」に転換されてしまうことは、すぐにおわかりかと思います。「ライフ・アクアティック」は、そうした意味で、純然たるコメディです。ペーソスあるコメディ。
3、4については、結構見た方もおられるでしょうし、特に感想は言いますまい。4の最後のビンタ攻勢には、感嘆せざるにはいません(かつ抱腹絶倒しながら)。
5の「ことの次第」は、これまた近年ぼくが愛してやまない、ヴィム・ヴェンダースの初期の作品です。SF映画制作の途中で、資金難に陥り、プロデューサーからも見放されてしまった映画監督の物語です。モノクロで、しかもわりと起伏の少ないシーンが続くこともあって、退屈に思われるかもしれません。しかし、「物語」だけが映画なのか、映画には「物語」がないといけないのか、という問題をつきつけ、しかし、それを覆すようなラスト・シーンを見せる素晴らしい映画です。

他に、佳作だと思えたのは、「シェルブールの雨傘」「レザボア・ドッグス」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」「エデンより彼方へ」「バグダッド・カフェ」「扉をたたく人」「リオ・ブラボー」ハリウッドの古典とも言うべき「リオ・ブラボー」は、今見ても色あせないこと間違いが無いですね。あのウエスタン的なかっこよさはなんなのでしょうか。

ああ、映画だけ見て(あと小説を読みながら)生きていきたいことだ。

2010年に見た映画
エル・ポト
第9地区
告白
借り暮らしのアリエッティ
シェルブールの雨傘
あの子を探して
スペース・カウボーイ
ホノカアボーイ
インビクタス
天才マックスの世界
ライフ・アクアティック
アバター
レザボア・ドッグス
パーフェクト・ワールド
月に囚われた男
博士の異常な愛情
ギター弾きの恋
デス・プルーフ
ナイト&デイ
ブラウン・バニー
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
エデンより彼方へ
バグダッド・カフェ
ことの次第
スプリング・フィーバー
扉をたたく人
リオ・ブラボー
パブリック・エネミーズ
ノーカントリー