'11読書日記22冊目 『一週間』井上ひさし

一週間

一週間

524p
総計6494p
井上ひさしの遺作。第二次世界大戦の捕虜としてシベリアに拘留されている日本人・小松修吉のドタバタな「一週間」。収容所の中でも関東軍の組織が温存され、日本人将校たちは作業をせず下等兵ばかりが苦役を強いられている極寒のシベリアを舞台に、なんとか日本へと帰国しようと主人公は粉塵の活躍を見せる。井上ひさし特有のユーモアに満ち、しかも彼の綿密な資料収集によって構成されたシベリアの収容所の生活がイキイキと描かれている。一人の捕虜が、大組織であるシベリア収容所に、ソビエトという国家に、立ち向かうというのはどうみてもリアリティを欠いているが、それにもかかわらず読者は小松の活躍に胸を躍らせ、スリルと哀愁を感じざるを得ない。しかし、アンチクライマクスの手法といえばそうなのだが、最後の終わり方はどうにも連載をとりあえず切り上げ、あとで単行本として出版するときに書き直そうとしたものではないか(そして筆者の死によってそれは叶わなかった)というくらいあっけない。