'15読書日記34冊目 『服従』ミシェル・ウェルベック

服従

服従

センセーショナルな内容を描く書物。筆致は不穏なほど静かで、服従せざるを得ないことどもへの諦念がある。ウェルベックは現代作家で最も読ませる作家の一人だと思うし、今作も偽史的想像力が遺憾なく発揮されているが、諦念への深さが足りないというか、諦念から服従へのプロセスに諦念に基づく抵抗がないというか、そのような不満が残る。イスラーム政権がフランスで発足し、ヨーロッパの理念がその外部であるイスラームからもたらされ、ひいてはローマ<帝国>の再建さえも視野に入れた運動が始まっていく、というこうした偽史的想像力の熱量に反して、ユイスマンスの研究者である語り手は常に外部に取り残され、常に振り回される存在である。偽史的な未来の描写と語り手の内省的で静かな生活が、絡まっているようで(もちろんストーリー上絡まっているのだが)、絡まっておらず、歯がゆさがある。