07読書日記10冊目「SIXTY NINE」村上龍


69 sixty nine (文春文庫)

69 sixty nine (文春文庫)

2,3年前に映画化された村上龍の小説「69」を古本屋で見つけて読みました。映画のキャストの妻夫木くんと安藤政信が印象的で、それを思い出しながら原作を読みました。原作と対等に渡り合っている映画だと思いました。妻夫木の高校生役は若干きつかったけども笑


事あるごとに言ってますが、僕は1969年が大好きです。ビートルズが解散しかけで、ツェッペリンが新しいロックをかき鳴らし、ヒッピー達が酒やドラッグを片手に、ウッドストックなどのロックフェスにつどった、そういう時代が大好きです。


そんな時代を日本に居ながら体感した村上龍の筆調にはある種のメランコリがあり、満足です。ただ、もっとバリケード封鎖のシーンやフェスティバルのシーンを盛り上がらせることが出来たら、と思います。その点で映画には負けています。


しかし、この小説の一番素晴らしいシーンは、実は69年の舞台ではなく、小説家になった"ケン"の元をアダマが尋ねて来たシーンにあります。


"僕が九年前小説でデビューし、そのデビュー作がミリオン・セラーになって騒がれていた頃、カンヅメになっていた赤阪の高層ホテルにアダマが訪ねてきたことがある。現在はもうそんなことはないが、そのときはアダマの訪問がとても苦痛だった。僕は急に有名になってひどい緊張状態にあり、アダマと遊んだ頃に引き戻されるのを警戒してしまったのである。ほとんど会話もなく、飲みかけのポットからぬるいコーヒーを飲んだだけでアダマは帰っていった。後でそのコーヒーを飲んでみて、十七歳を一緒に過ごした友に、こんな味のコーヒーを飲ませた自分を、ひどい男だと思った。"


このくだりのためだけに存在している小説ですよね。ここが素晴らしすぎる。


230p

総計3026p