07読書日記9冊目「R62号の発明・鉛の卵」


R62号の発明・鉛の卵 (新潮文庫)

R62号の発明・鉛の卵 (新潮文庫)

安部公房です。僕の友人に二人くらいむたむた安部公房好きな変な若者が居ますが、彼の作品を読むのは「砂の女」「箱男」に続き三冊目です。全然安部公房フリークでもないんですが、このタイトルに惹かれて去年の6月頃に買ったままほったらかしにしていました。


短編集です。思索的・方法論的に冒険に富んだ作品集です。全体を貫くテーマとして「生と対極にある死、死を相対化する死体」ということがあるでしょう。難しいこと書いてますが、安部公房のすごいところは簡潔な表現や凄腕のストーリーテリングで加速度を付けていくところでしょうか。表題の「R62号の発明」では、人間に機械化(サイボーグ化)されてしまった「機械技師」が、機械を発明して人間に復讐する、という複雑な構図を描き、「鏡と呼子」では見られている事は逆に見ることである、という入り組んだ構造を描いています。「R62号の発明」は読みにくかったのですが、だんだん話を読むうちに、文章リズムに慣れてきたのかすらすら読めました。


僕が好きな作品は「鏡と呼子」、「鉛の卵」。これは先駆的SFとしても読めるし、SFと袂別している点は、あくまでその哲学的主題に重点が置かれているところです。


364p

総計2796p