07読書日記8冊目「勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪」アーネスト・ヘミングウェイ
勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪: ヘミングウェイ全短編〈2〉 (新潮文庫)
- 作者: アーネストヘミングウェイ,Ernest Hemingway,高見浩
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1996/06/28
- メディア: 文庫
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印象は「固ゆで卵」ですね。ハードボイルド小説です。感情を抑制し、比ゆ表現などを極力なくした小説。「死」や「失うもの」についての小説が多く、短編小説の一家を成したヘミングウェイならではです。簡潔な表現で、救いようのない絶望(hopeless despair)を淡々と表現します。特に、闘牛士を夢見た少年の悲惨でありながらも枯淡な悲劇を描いた「世界の首都」、死ぬ間際に人生について回顧し、自らが描こうとしてきた、逃れようとしてきた「死」について、達観してしまう小説家を描く「キリマンジャロの雪」が好きですね。
(今まで連れ添った女とよく喧嘩ばかりし、自分の愛を激しく注ぎ込み、多くを求めてきたハリーであったが、アフリカのサファリで負った傷跡が壊疽し、やがて死に至るであろう場面)
『こいつは素晴らしい女だ。めったにいないくらいいい女だ。そう思った瞬間、自分は確実に死のうとしている、という思いが突然ひらめいた。それは激しい勢いで襲ってきた。水や風が押し寄せる用にではなく、邪悪な臭いを放つ空虚として、突如襲ってきたのだ。』
こういう胸を直撃する文章に出会うと、奮えと興奮がとまりませんね。名文を多く読みたい。
404p
総計2432p