07読書日記33冊目 「楢山節考」深沢七郎
アンチ・ヒューマニズムなのだそうだ。
- 作者: 深沢七郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1964/08/03
- メディア: 文庫
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収録されている短編の中で「月のアペニン山」「楢山節考」は読ませたが、残りの「東京のプリンスたち」「白鳥の死」は少々ひどかった。
Amazonのレビューをしているのは烏合の衆であって、同時に衆愚であり、信用できるレビューなどは少ない。
「楢山節考」は「姥捨て山」の伝説を写実的に、且つ極めて簡潔な文体を用いて綴られた短編であるが、けっして「ものすごい」名作、とか、「現在にも通じるところのある・・・」という様な表現では決して語られてはいけないと思う。この作品はむしろ、そういったヒューマニズム・アンチヒューマニズムの壁を悠々と乗り越えて、「ただそれがそこにそのままある」という半ばリアリズムの手法を用いて描かれた小話に過ぎない。そこに「雄大さ」とか「伝説性」「壮絶性」を読み取るならば、それはステレオタイプに毒されてしまったレビューだ。「月のアペニン山」と並んで、この作品には、何の変哲もない日常が我々の日常の様式とあからさまにことなった場合、我々はそこに何を感じざるを得ないか、という様な一種の思考実験が付されている。私小説的とでもいうべき淡々とした筆遣いで、”ことなる”常識世界を描いているのだ。なんでもないところにそんざいする、なんでもない真理をどう語れば良いだろう?
僕には、かなり物足りなかった。
198p
総計9597p