08読書日記41冊目 「アメリカン・スクール」小島信夫

アメリカン・スクール (新潮文庫)

アメリカン・スクール (新潮文庫)

小島信夫初期の短編集

この人の小説は、「意識の流れ」とも言うべき、語り手の内面世界と外的世界が混濁し、読者を(のみならず作者をも)惑乱する、オモシロイ小説なのだ。

江藤淳が解説で面白いことを書いている。
≪小島氏の「アメリカ」が、「近代」というものをすでになにかのかたちで体験したことがあり、人間には自律した内面があり得ることを識った日本人のとらえた「アメリカ」ではなく、いわば「近代」という仲介者なしに土俗がそのままとらえた「アメリカ」だということである。このような「アメリカ」は、私の知るかぎりでは大江健三郎氏の作品にしか登場しない。そして小島氏と大江氏との根本的な相違は、大江氏にとっての「アメリカ」が明らかになにかを解放したものととらえられているのに対して、小島氏のそれがもっとも深い敗北をもたらした圧力――しかしつながりようのない圧力としてとらえられている点にあるものと思われる。≫

たしかに小島信夫の小説世界に登場する、「アメリカ」との邂逅を果たす人々らは、執拗に「恥じ入り」、「圧力」を感じている。大江にしろ、アメリカとの邂逅は、(極めて初期の作品において)、日本人に対して「恥辱」とも思える描写を介して描かれる。二人に共通するのは、日本を世界の「周縁」として描写する事であろう。

390p
総計10700p