08読書日記78冊目 「城」カフカ

城 (新潮文庫)

城 (新潮文庫)

Kの感じと、Kaの感じがものすごくクリソツである(とは言うもののやっぱり違う)。職業が人間の本質存在を規定する、という社会、それはアレントが示唆したようにwhoの発露ではなくてwhatの発露なのではあるが、その社会において、きわめて不条理な、それでいて「職業」の最高位に位置する官僚制度を皮肉った作品。

実に悲劇的であるし、それでいて喜劇的である。雪深い街並みは寂寥感を引き立てるのに抜群の働きをするし、Kの傲慢な態度や自信に満ちて譲らない態度は、まるでRPGを読者が楽しんでいるような気分にさせる。しかし、そのKも最後の最後には疲れ果ててしまい、議論する元気さえなくなってしまうような状況に陥るのだったが。フリーダの恒久的な愛も、実は陰謀じみており、Kはここではもはや本当に疎外されている。だが実のところ、Kだけではなく、村の人々は誰しもが疎外されているのだ、「城」に。「城」とはもはや誰がその最高権力を握り、何を行うための機関であるのか(それはただちに「陳述」のためだけのように思われる)、さだかではないし、そのことについては村人もKも多くを語らない。城の存在理由を、誰しもが疑問に思わず、それでいてそこからの不可視的な眼差しを常に照射されていると感じているのだ。フーコーが描いたようなパノプティコン的な権力、不可視的な権力がここには存在するし、それに対して議論を吹っかけていくような「公衆」は存在しない。「公衆」は即座に、存在理由が曖昧であるにもかかわらず絶対的な眼差しを維持している「城」の言いなりになるのだ。

630p
総計22109p