08読書日記119冊目 「スローターハウス5」カート・ヴォネガット・ジュニア

ヴォネガットを読むのはこれがはじめてである。SFという枠組みで出版されて、読者層がへんに限定されてしまうのではないか、ということが残念だが、ヴォネガットならみんな知っているか、という気もしないでもない。むたむた面白い。

人生の悲惨さを描く、という点で、サリンジャーに似たものを覚えるのだが、この姿勢はまさに村上春樹に受け継がれている。『ピンボール』なんかは、本書とくりそつである。歴史というものが恣意的に認識された想像の産物だとすれば、本書のテーマである「時間」の偏在は、まさにそれを覆すようなものとなっている。

めんどくさくなったのでとりあえず、なんか引用して終わる。

『そこに見るドレスデンは、鉱物以外に何もない月の表面を思わせた。岩石は熱かった。近隣の人びとはひとり残らず死んでいた。そういうものだ。』

267p
総計35182p