09読書日記10冊目 『自由主義に先立つ自由』クエンティン・スキナー

自由主義に先立つ自由

自由主義に先立つ自由

ポーコックの盟友であるとともに、よき批判者でもあるクエンティン・スキナーの講演。大雑把に議論が進められていくし、ポーコックにはない思想史家から思想家への逸脱もあって面白く読める。

ポーコックと彼の「共和主義的パラダイム」の理解は比較的顕著に異なっていると感じた。というのは、スキナーの場合、シヴィックヒューマニズムパラダイムで(彼の言葉で言えばネオ・ローマ的パラダイムで)語りながら、消極的自由にも言及しているのである。いわば、消極的自由と積極的自由の循環的止揚を目指していると言えよう。積極的自由の発露の場として「自由国家」があり、「自由国家」の内で個人の自由が満たされるということである。思想史から何を学ぶのか、ということであるが、彼が言わんとするように、ただ歴史のキャノンを現代風に理解するのではなく、その歴史のパラダイムからありえた選択について思考すること、これである。

181p
総計3236p