09読書日記9冊目 『赤と黒』スタンダール

赤と黒(上) (新潮文庫)

赤と黒(上) (新潮文庫)

赤と黒(下) (新潮文庫)

赤と黒(下) (新潮文庫)

フランス近代文学の幕開けを「恋愛」の名の下に切り開いた大名作。

政治がらみの筋書きもあって、現代のものにしてみれば退屈ではあるが、当時の人のために娯楽ものとして政治を文学に入れざるをえなかったのだ、とスタンダールは書いている。しかし、つまるところ文学とは政治であって、政治とは「運命」に対して「個人」をどう生きさせるか、という企図に過ぎないのであるから、それが文学足りえることもまたありえる。ドストエフスキーのラスコリーニコフがそうであったように、本書の主人公も神学者(黒)でありながら、ナポレオン的な革命の思想(赤)に情熱した。そして、主人公はその二つにも何よりもまして神学者(黒)の身を捨ててまで、れーなる夫人への愛に血(赤)を流したのだった。

>>オペラのヒロインは「あのひとにはげしい思いを寄せるわが身をこらしめなければならない、あたしはあまりにもあのひとを愛しすぎている」と歌っていたのである。

>>政治なんて文学の首にくくりつけた石ころみたいなもので、半年もたたぬうちに文学を沈めてしまいますよ。

>>とにかく、口をきかないことだ

354+521p
総計3055p