アメリカでは25年ほど遅れてユルゲン・
ハーバーマスの初期の主著『公共性の構造転換』が翻訳・出版されたらしい。日本では1973年に初版が翻訳されている。で、それをきっかけに、
ハーバーマスを交えた大々的なシンポジウムが開かれた。それをまとめたのが本書。本書は抜粋版で、何人かの論者の報告が省かれている。もっとも読み応えがあり、
ハーバーマスの批判的発展を促すのは、
フェミニストのナンシー・
フレイザーによる報告である。
ハーバーマスの公共圏への批判の大まかな形を知るには、良い本。まず二点大きくあげられるのは彼の公共性が白人・男性・
異性愛・
ブルジョワ中心のものであって、抑圧的である、ということ。そして、彼のコミュニケイション的理性をあげ連ねて、普遍的な合意の可能性を懐疑視するもの。どちらも、ありきたりの批判であるが
フレイザーによる前者タイプの議論はすごく議論がシンプルで納得できるものである。あとの論者の議論は、翻訳のせいもありかなり読みにくい。読む価値のあるものとしては、セイラ・ベンハビブの議論で、そこで彼女は共和主義的公共性・
自由主義的公共性・
ハーバーマス的公共性という三分類を提示している。
アレントやムフなどはどのあたりにはいるのだろうか、
ハーバーマスは前二者のいいとこどりなのだろうか、など、これはこれで興味深い。
348p
総計24467p