水脈探し

荒涼とした大地に、男と女が立っている。彼らは井戸を掘り当てるために、この不毛な大地にやってきたのだった。草も生えないこの土地で、彼らはそれぞれに水脈を探し、水を得ねばならない。
女はやにわにシャベルを手に取り、手当たり次第に地面を掘り始めた。彼女は汗水をたらしながら、ざくりざくりと土を掘り返していく。
男は、ダウンジング・マシンを持っている。男には知性があった。彼は自分で作ったダウンジング・マシンを持っている。彼は女を尻目に、マシンを持って辺りをさ迷い歩く。
幾日かして、ずいぶん深く掘り進められた穴の底で、女はいまだ水脈を探し当てられずにいる。彼女は半ば自暴自棄になり、泥まみれになりながらそれでもなお土を掘り返す。
一方、男はかすかに震えるダウンジング・マシンを見ながら、そこら中をうろうろとしている。地面のどこを調べても、マシンは微動を繰り返すので、男はどこに水脈があるのか、確信がもてないでいる。だが、きっとどこかに大きな水脈があるのだと、彼は信じているのである。
あるとき男は立ち止まる。穴の底で奮闘する女に目をやり、ダウンジング・マシンを作動させ、こう言う。「ねえ、そこからは間違いなく水は出ないと思うよ。僕のマシンの反応を見てごらん。微動だにしていないじゃないか。そんなところをいつまでも掘っていたって馬鹿を見るだけだぜ」
女は手を休めて、男に耳を貸す。彼が言うことが本当ならば、彼女自身の努力は全く無駄になりはしないだろうか。彼女自身、そこから水が出てくるとも思えずに不安なのだった。女は戸惑う。だが、一瞬のうちに彼女は今この現実を見やり、落胆しつつも快活にこう言う。
「あなたの言うことが本当だとしても、私はここを掘るしかないわ。とにかく、なにがなんでも掘るしかないの。きっと水は出てくるのよ。女の勘ね。なにしろ、私はもう深く掘りすぎてしまって、この穴から出ることはできないのよ」
男は女を嘲り笑う。「何なら手を貸してやろうか、そこから出してやろうか?」女は、結構よ、とだけ叫んで、またもくもくと穴を掘り進める。彼女は一人でそこから出るには深く掘りすぎてしまったのだ。彼も再びダウンジングを始め、あたりをさまよい歩く。そしてまた日が暮れていく。
数年がたった。女の掘った穴は深く地中に伸びている。太陽の光もささないまでに深く掘られた地の底で、女はまだ土を掘る。シャベルを振りかざす。男も男で、マシンの反応を調整しながら、そこら中を歩き回っている。確かにここだと思うときもあるのだが、その確信はすぐに男の理性的な判断で打ち消され、彼はまだ穴を掘ることさえしていない。
そのとき。女は自分の足がぬれていることに気づく。ふと見れば、周りの土はぬかるんでいる。彼女はついに水脈を掘り当てたのだ。女は一心不乱に辺りを掘り返す。水はどんどん染み出てくる。彼女は手を休めない。土の壁は崩れ、水が足元からたまっていく。
ちょうど同じとき、男は数年来歩きまわった疲労からか、水脈を確信できない失望からか、照りつける太陽にめまいを起こして、いよいよ大地にへたりこんでしまう。皮肉なことに男は、水脈の代わりに、自分の死を確信する。彼はもう死のうとしている。
一方女は、歓喜に満ちた表情で湧き出た水を飲んでいる。穴の底には水がますます勢いを増して溢れてくる。それに彼女は気づいていない。大喜びで水をすくい、長く土にまみれていた顔を洗い、身体をそそぐ。しかし、ああ、彼女の首もとまで水は迫ってきているのだ。もはや足は底についてはおらず、彼女は自分の掘り出した水で、ついに溺れてしまう。しかし彼女は笑っているのだ。
いつしか日が暮れて、一人女は水の底で溺死している。男は草も生えない荒れ果てた地で、静かに死んでいる。