'10読書日記2冊目 『社会思想史を学ぶ』山脇直司
- 作者: 山脇直司
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/12/01
- メディア: 新書
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一方、不満に思ったところも二点ある。まず、筆者が(フランス)現代思想を一面的に否定的に捉えているかに見えるのは、残念だと思う。確かに80年代90年代のポスト・モダニズムの議論は、知を軽薄化してしまったのかもしれないが、その軽薄化は戦略だったのではなかったか。フーコーやデリダ、ドゥルーズに過剰に期待をかけることもよくないだろうが、一面的に切り捨てるのではなく、彼らも古典として読み直すところがあるのではないか。特に、ハーバーマス・アレントを視野に入れるのであれば、フーコー・デリダの議論をそこに併せて対決させていくことが面白いだろう。
二点目は、社会思想史を学ぶ人を、筆者がどこに想定しているのかが明確ではない点である。それは学者の卵であるのか、インテリであるのか、はたまた、一井の市民か、それとも「衆愚」、「大衆」なのだろうか。問題は、公共的な思考を大衆・衆愚がもてないところにある。あるいは、大衆がそもそも公共的な思考を獲得する必要があるのか、と言う点である。グローカルの訴えを哲学的に洗練していくためには、それが啓蒙的であるべきなのだろうか。一般市民はローカルのことは考えられても、グローバルな部分については偏狭にならざるを得ないのではないだろうか。その偏狭さを乗り越えるためには、どうすればいいのか。社会思想史を読み直せば良いのか。その当たりがよくわからない。
220p
総計510p