'10読書日記3冊目 『社会』市野川容孝
- 作者: 市野川容孝
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/10/26
- メディア: 単行本
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本書で、筆者がその規範的な「社会」という言葉の出発点に据えているのはルソーである。彼の『不平等起原論』と『社会契約論』の読解を通じて、平等と差異の問題、平等と所有の問題に切り込んでいく筆致は鋭い。ルソーは自然的な不平等を社会契約によって市民の平等へと解消しようとしたのだった。しかし畢竟、彼は「めまいのしそうな他人の近さ」のなかに、つまり目くるめく同一化の罠にはまりこんでしまうのでもある。社会的な平等の概念は、ルソーの社会契約、あるいは全体意志の手段をとることはできない。筆者がそこで「社会」の達成へ手段として依拠するのは、ルクセンブルクとベンヤミンの民主主義論である。差異の平等こそは、今や目指されるべきものとなった。
アレント、ハーバーマス、ルーマンなど多岐にわたって浩瀚に論じられており、本書はまさに入門書的な様相を持ちながらしかし同時に極めて面白い思想書なのである。特に、マルクスではなくイギリスの経済学者W.トムソン(トムソンといえば僕はE.P.のほうしか知らなかった)を大々的にフューチャーしていて、すごく啓発された。
237p
総計747p