3-18

15日
しとしと春雨。昨日は春一番が吹いていたらしい。カラオケをはじめて一緒に。新しく買った服を着て、はしゃぐ。緑色の水玉のシャツ。
夜行バスに乗る前、御池にあるアイリッシュバーでギネスとキルケニーを飲む。もちろんフィッシュ&チップスも。そして、夜行バス。バスの中で、静かに横で眠る人にこっそりキスしたり、そんな中学生みたいなことも、はかない春雨に紛れて、眠る。
くるり「グッド・モーニング」がとても、あう。
http://www.youtube.com/watch?v=Adb18BrhPS4

夜行バスは新宿へ向かう
眠気とともに灯りは消えてゆく 君の腕枕で眠る
夜行バスは新宿に着いた 
予定より三十分早く 冬の真夜中のようさ
白い息は道標にもなりゃしない
やけに広い横断歩道 手を引いてわたる
何処へ向かう

16日
夜行バスは新宿に着く。予定より三十分遅れて。早朝の新宿の街は、化粧をしたまま眠りこけた女の朝の顔。汚いし、さめざめとしている。その上を、サラリーマンや学生が踏みしだいていく。
渋谷までとりあえず。チェーン店のカフェで食べたモーニングは、並み以下。夜行バスは、年寄りにはきついな、とかなんとか。腰やら背中が痛い。長い一日の始まり。
駒場で事務処理を済ませ、再び渋谷。ふらりと入った楽器屋で、鍵盤を興味深げに弾く。そして六本木へ。芋洗い坂というよく分からない坂道の途中で、オープンテラスのイタリアン。長く食感の変わったエリンギとか、パン食べ放題とか、カルボナーラの半熟卵とか、おいしいアイスとか。
六本木ヒルズの展望台。東京はすごい街だ、こんなところで暮らしているなんて頭がおかしいよ。僕はもうすぐ東京に行く。
紫色の傘を、大切にしている。僕はビニル傘を六本木ヒルズに置いて行く。歩き疲れて、へたりこむ。地下鉄では少し機嫌が悪い。眠たい。
原宿。黒人の客引き。帽子をかぶって見せて、似合っているよ、と嘘をつく。歩き回って汗をかく。修学旅行で行ったラパウザ、変なユニクロ。ロンTを買って、そこで着る。PUNK!って書いてある紫のTシャツ、紫のリュックと色が被るんじゃない、と言われて、そんなことないやろ、似合ってる、とか。女の裸の絵柄のTシャツを着る、若いお兄ちゃん。インターナショナル・スクールのかわいらしい男の子たち。結局渋谷までとぼとぼ歩き、入ったカフェでケーキを食べる。僕のチーズケーキをちょっとだけ食べる。いま、書いておかないと、全部忘れてしまうことばかりだと思う。
ディズニーシー。夕方からのパスを買って、テンションが上がる。どのアトラクションも2時間待ちくらい。仕方なく並んで、しりとりをしたり、ストロベリーのポップコーンとか、チキンを食べたり。二人で並んでいると、周りの目を気にするけれど、楽しい。昔の恋人の話を、ちょっと悲しく聞いていた。あまりにもディズニーシーがエンターテイメントで、完璧で、僕はそのおこぼれの少しにもありつけず、分け与えてあげることもできない。楽しい時間。ジェットコースターが、頂上にカタカタと上っていく。遠くのほうで、ショーの最後に打ち上げられた花火が、見えたと思ったら、坂を駆け下りていくコースター。寒くって涙も出た。久しぶりに、そして初めて一緒に乗るジェットコースター。待つ時間は長くって、楽しい時間は一瞬ですぎていく。
突発的に、夜行バスで帰ることをやめて、赤坂のホテルに素泊まり。ビジネスホテルに泊まってるって、大人やな、とか言うから、僕は大人になろうと思う。ディズニーランドのホテルにとめてあげることなんか出来ないけれど。どこか海外旅行に行きたい。ビールを飲んで。眠る。
17日
朝クロワッサンがおいしい喫茶店でモーニング。肌寒い東京。新幹線で帰京。あっちゅーま。駅弁を食べてすぐ眠る。快適。
三条大橋のカフェで、またケーキ・コーヒー。長くしゃべる。将来のこととか、そんなこと。怠け者にはなったらあかん。僕はそう言うけれど、君は覚えていてくれるか。よく食べる二人。
バイトに行くあいだ、僕は眠りこけ、部屋を片付ける。汚い部屋。きれいな部屋。そして、またお好み焼きを食べに。ビールを飲んで、また眠る。
18日
疲れていたんだろう。朝の光が柔らかい。ホテルのシーツが懐かしい。昨日までが春の夢みたいに、あっという間で、そしてそれが一番長く過ごした最初で最後の3日間で。そして、帰宅して、洗濯物を片付けたり。