'10読書日記79冊目 『クォンタム・ファミリーズ』東浩紀

クォンタム・ファミリーズ

クォンタム・ファミリーズ

372p
総計24003p
あずまんの『動物化するポストモダン』は別にふーんと思いながら読んだ。『存在論的、郵便的』は未読であり(しかも友達に貸していた)、なんともいえなかったのだが、端的に、本書を書いた東浩紀、すなわち小説家東浩紀は、ものすごい。これを一発目でかけてしまうところは、すごい。僕としては、あまり感動することも無かったが、しかし、小説としても面白さは抜群だろう。「ゲームのプレイヤーは、それがゲームであることを忘れたときにもっとも強くなれる」や「だいじょうぶ、だいじょうぶ、みんな暗くなったらおうちに帰るんだから、汐ちゃんが連れていってあげるんだから」とか、印象的なセリフが効果的に使われている。特に、前者は、最終盤での弁証法的な転回でより際立っていく。単なるロリコン小説でも、メタ-入れ子小説でもないものが、書き表されていると思う。理論家がここまで小説を書くということ、これは羨まずしてなんであろうか。