'10読書日記80冊目 『ヘーゲル入門』

ヘーゲル入門 (KAWADE道の手帖)

ヘーゲル入門 (KAWADE道の手帖)

191p
総計24194p
ドイツ観念論へ向かう前に、簡単なヘーゲル入門を、と思って借りてくる。twitterでお見かけしている千葉雅也さんが寄稿してはるのを知っていたからだ。しかし、実際、この『ヘーゲル入門』は全く入門書ではない。ヘーゲルが何を考えていたかをまじめに書いている人はいない。みんな好き勝手にヘーゲルについて/を用いて語りまくる。レクチャーという形式で、8本論文があり、エッセイ・論考が4本入っている。そのどれを読んでも、ヘーゲルに「入門」することなどできない。実にふざけたムック本なのである。
だが、それが面白い。「ヘーゲルの魅力と可能性の全て」と副題にあるのだが、「全て」とはいかずとも、ヘーゲルについて語ることの楽しさが充分に伝わってくる。特に面白かったのは、岡本祐一朗「ヘーゲルは現代によみがえるか」や田崎英明ヘーゲルのもう一つの系譜と可能性」、千葉雅也「マラぶーによるヘーゲルの整形手術」、池田喬「「弁証解釈学」からの出発」であろう。しかし、ヘーゲルそれ自体の面白さ、というよりも、ヘーゲルがどのように他の思想家(例えばハイデガーマラブー)の問題圏に属していたか、というほうに感応してしまった。とりわけハイデガーの「弁証解釈学」とヘーゲルの主体の弁証法は興味深い。