'10読書日記82冊目 『歴史哲学講義』ヘーゲル

歴史哲学講義 (上) (岩波文庫)

歴史哲学講義 (上) (岩波文庫)

歴史哲学講義〈下〉 (岩波文庫)

歴史哲学講義〈下〉 (岩波文庫)

363+381p
総計25263p
初めてのヘーゲル(院生になってこんなん言うと恥ずかしい疑惑だがそれをものともしないのですねキリッ)。きっとみんな最初の理論パート(およそ200ページ)で挫折するのでしょうが、その辺はさらーりと流しておけば、あとはめくるめく歴史叙述であり、かつ、世界史の復習(しかもヘーゲル大先生のコメントは結構面白い)なのです。
上巻は理論パートと、中国・インド・ペルシャです。理論パートの部分で重要なのは、ヘーゲルがしようとしているのは、哲学の歴史ではなく〈世界史〉の哲学、すなわち、思考によって歴史を捉えることです。どうして歴史が哲学されねばならないのかというと、ヘーゲルが考えるところでは、歴史において理性が姿を現してくるからです。「世界史の本体は精神であり、精神の発展過程」であるという風に言われています。上巻は、その〈歴史〉の始まりの部分。およそオリエンタリズム丸出しな感じなのではありますが、若干比較社会学みたいな匂いもします。というのも、ヘーゲルの問題意識は、どうしてヨーロッパの一部という特殊なところから普遍的で自由な精神が誕生するのか、というところにあるからです(まるでウェーバーみたいですよね)。上巻は、ペルシャが終わるのですが、その最後に「次回、いよいよ人類に自由が訪れるギリシャ編!」みたいな言葉があって、がぜん下巻を読むのが楽しみになるという按配。
下巻は、ギリシア・ローマ・ゲルマン世界の叙述です。特にキリスト教関係の記述が興味深いですね。原罪の物語を読み解くヘーゲルは、少なくとも、カントの「一般史における憶測的起源」よりも数段面白い。
とまあ、感想を書くのも面倒くさくなったところで、次は「法哲学」でしょうね。