'12読書日記47冊目 『「デモ」とは何か 変貌する直接民主主義』五野井郁夫

「デモ」とは何か 変貌する直接民主主義 (NHKブックス)

「デモ」とは何か 変貌する直接民主主義 (NHKブックス)

213p
総計12911p
相関の大先輩の著書(「変貌する直接民主主義」というサブタイトルに込められたオマージュが好ましいです)。ハレ大学のセミナーの企画が、市民社会ソーシャルキャピタルということだったので、日本でいま最もアクチュアルな話題に切り込んだ本書を機内で読みました。オキュパイ運動の内部に理論的に切り込んでいき、かつ日本の社会運動史を的確にまとめた上で(その中でも特に丸山真男の理論的な位置づけがなされており興味深かったです)、最近のデモを新しく捉え直すことを試みています。筆者によれば、近時の脱原発デモは、かつての――つまり1968年の――それと非暴力的であるという点で決定的に異なっており、一度消費経済思考の流れの中で失われていた(ように見えていたが伏流としては流れ続けていた)議院内閣制における「院外」の政治形態としての直接民主主義を表現した「祝祭としてのデモ」だということです。アクチュアルな脱原発デモを、思想史的・運動史的な流れの中で捉え返すことで、一層そのアクチュアリティを際だたせることに成功しています。残された問題は、「祝祭」「院外」としてのデモを、どのようにして常時の、院内の政治――しかもそれはメディアや市民の規範意識においては唯一の政治的なものとして表象されがちなものですが――に結びつけていくか、ということです。