'13読書日記8冊目 『おどろきの中国』大澤真幸・橋爪大三郎・宮台真司

おどろきの中国 (講談社現代新書)

おどろきの中国 (講談社現代新書)

384p
総計4304p
『ふしぎなキリスト教』の対談方式を踏襲しており、中国にものすごく詳しい橋爪大三郎に後輩の2人が質問するという形を取っている。うまい商売考えはったな、という。しかしともかく、中国という国家の原理、あるいはその歴史、儒教的伝統について知見を開かれる所が多い。そもそも、中国四千年の歴史などというが、「中国」という国家がその頃から絶え間なく存在し続けたということにおどろくべきだし、ふしぎである。その点、中国は国家としてではなくEUとしてみるべきだ、という橋爪さんの主張は、なるほどと思わず納得してしまう。

EUなるものが、つい最近できたでしょ? 国民国家の枠を超えて、もっと大きな政治的・経済的・文化的なまとまりをつくろうとしている。EUはまあ、中国みたいなもの。逆に、中国は、二千年以上も前にできたCU、中華連合なんです。「なんで、中国がそんなに昔に中国になったか」という質問は、「なんでEUがこんなに遅くにやっとEUになったか」という質問と、裏腹なんです。

四部構成になっており、第1部は中国の歴史や伝統、価値観について基本的なことを抑え(しかしそもそも儒教についても僕は全然多くのことを知らなかったし、個々の部分が一番、三者社会学的なものの考え方がよく現れていて面白かった)、第2部は近代中国と毛沢東について、第3部は日中の歴史問題(日中戦争)について、第4部が現在の中国とこれからの日本について、議論が行われている。
僕としては近現代史を扱った第3・4部よりも、第1部・第2部の方が真に「おどろき」をもって読んだ。そこでは世界史で習う古代から近代までの中国史が、儒教や漢字、科挙、宦官、「天」といった高校倫理で習うキーワードと有機的に結び付けられていて、まさに「おどろき」を提供してくれるのだ。大澤・宮台両者の質問がなかなか鋭いのと、それに答える橋爪さんの語り口がしっくりきているのだな。
ちなみに、本書をkindle版で購入し、ipad miniで読んでいたのだが、すこぶる快適な読書体験をした。もうガンガン電子書籍化していこーぜ。