'14読書日記46冊目 『日本近代文学の起源』柄谷行人

日本近代文学の起源 (講談社文芸文庫)

日本近代文学の起源 (講談社文芸文庫)

まえに古本屋で買ったまま積読になっていたもの。ところで、この本、以下のように「定本」やら「原本」やらがあって、よく分からない。そういうのやめて欲しい。
定本 日本近代文学の起源 (岩波現代文庫)

定本 日本近代文学の起源 (岩波現代文庫)

日本近代文学の起源 原本 (講談社文芸文庫)

日本近代文学の起源 原本 (講談社文芸文庫)

ともあれ、非常に面白かった。78年から80年までに連載されたものだが、今読んでみても議論は面白い(というか明治・大正期の小説家たちのことを知らなすぎて、それを明快な整理とともに教えられる、ということなのだろう)。方針としては、西洋が長い年月をかけて作り上げてきた「近代」とその綻びへの過程が、日本においては明治から大正にかけて露出する、その露出を取り出すというものである。「起源」を問いなおす系譜学あるいは歴史社会学(?)の研究は今や当たり前の観もあるが、当時としてみれば最先端を行くものであったろう。思想史として読まれるよりも、やはり「批評」なのだろうが、日本において短期集中的に、というか純化されたかたちで露出する西洋近代を取り上げるというところは、「思想の国際転位」という問題意識から見習いたい。

西洋の「文学史」を規範とする限り、それは短期間に西洋文学をとりいれた明治日本における混乱の姿でしかないが、むしろここに、西洋においては長期にわたったために、線的な順序の中に隠蔽されてしまっている転倒の性質、むしろ西洋に固有の転倒の性質を明るみに出す鍵がある。