'14読書日記55冊目 『岩波講座・政治哲学3 近代の変容』

近代の変容 (岩波講座 政治哲学 第3巻)

近代の変容 (岩波講座 政治哲学 第3巻)

周知されているように、12/6土曜日には法政大学でシリーズ完結記念のシンポジウムが行われるようです(案内pdf)。それに合わせて読んでいたのですが、別の研究会と重なって行くことができなくなりました。
内容についても書きたいのですが、いま時間がなくて、一言だけ。19世紀の思想の多様性に驚かされる、というのがほんとうのところです。ベンサム、ミルあたりはまだついていけるカンジがするのですが、コンスタンもトクヴィルも、果てはニーチェに至るまで、けったいなものもたくさん噴出してきます。「けったいさ」に付き合って、そこに一定の原理を読み解いていくということが大切だと思うのですが、本書の論文はその読解の面白さを十分に堪能させてくれるでしょう。個人的には、ミル『代議制統治論』を最近授業で読んでいるということもあって、小田川論文は簡便な(しかしミルの思想のわかりにくさも含めて)見取り図を提示してくれており助かります。森論文は「プルードンアナーキズム:政治的なものと社会的なもの」というタイトルですが、マルクスの政治論も含めて扱われており、こちらもプルードンとの対比も含めて勉強になります。19世紀は大陸系がメインに扱われているのですが、それに対して思想的に独特だと思わされるのが、宇野論文で取り上げられたプラグマティズム。前からプラグマティズムには、どうにも掴みどころがないような感じを受けていたのですが、懐疑の精神と実験の精神の協働に見どころがあるという点、興味深かったです。