'15読書日記15冊目 『新しい貧困』ジグムント・バウマン

新しい貧困 労働消費主義ニュープア

新しい貧困 労働消費主義ニュープア

初バウマン。ポスト産業社会としての消費社会における貧困・排除の問題。労働倫理の歴史を追うなかで、それがいかに機能を果たし、それがいかに終わりを迎えていくか(消費の倫理にかわられていくか)。危険なものと見られた貧しい人々が社会から安全(ないし危険・不安)の論理によって排除されていく。排除の宛先はかつては先進国外部であったが、グローバル化した今日ではローカルなところへ、つまりは刑務所になる。

現代社会は何よりもまず、その成員に消費者の役を割り振っており、かろうじて二次的、部分的に生産者の役割を与えている。こうした社会規範にそって一人前の成員となるためには、消費市場の誘惑に迅速に効率よく反応する必要があり、「需給バランスの好転」に貢献し、経済が不調な時には「消費主導の景気回復」に一役買う必要がある。適切な所得やクレジットカード、より良い時間の見通しを持ち合わせていない貧しい人は、この全ての面で、適性に欠ける。したがって、今日の貧しい人々によって壊されている規範、つまりそれを壊すことで彼らが「異常」とされる規範は、消費者としての能力や適性の規範であって、雇用のそれではない。今日の貧しい人々は何よりもまず「非消費者」であって、「失業者」ではなく、彼らは第一に欠陥のある消費者と規定される。というのも、彼らが果たせないもっとも重要な社会的義務が、市場が提示する商品やサービスの積極的で有効な購入者のそれだからである。消費社会のバランスシートで、貧しい人々は明らかに借方の側に記録されており、現在あるいは将来も貸方の側に記録されるとは思えない。