夏休み読書マラソン8冊目 九月の四分の一 大崎善生


九月の四分の一 (新潮文庫)

九月の四分の一 (新潮文庫)


喪失と再生をテーマにした4編の短編小説。主人公は一人称の「僕」で描かれていて、それぞれ、恋愛小説になっている。読みやすかったし、表題でもある「九月の四分の一」はちょっと粟立ちますよいろんな部分が。全編を通して、澄み切った文章でつづられているのでなんていうか、洗われるというか、癒されるというか。


なんですが、文章とか、モチーフィングとか、あとちょっとしたことも「村上春樹」の影響バシバシって感じですね。だから俺にとって読みやすかったんやと思う。会話の中の比喩とか、明らかに春樹臭がぷんぷんしてる。


「現代の作家に課せられる使命の一つとして、いかに村上春樹を消化し乗り越えるか。」というようなことがだいぶ前の朝日新聞の書評みたいなんに書いてあったけど、本当にその通りなわけで、俺が書く文章とかにも色濃く、鮮やかに、そして、魔女狩りがヨーロッパを席巻していた頃に物陰に身を潜めて息を殺していた異教徒の妻のように、春樹が影響しているわけだ。みたいな、比喩が村上春樹っぽいわけです。こういう比喩って無駄やけど、ウィットにとんでいてすごく好感が持てませんか?僕はもてるんだけどなあ。やれやれ(これも村上春樹の小説の主人公が好んで使う言葉です)


脱ムラカミさん。


240p

総計2255p