夏休み読書マラソン9冊目 ニシノユキヒコの恋と冒険 川上弘美


稀代のプレイボーイ、ニシノユキヒコの恋を、彼の恋人側である彼女たちからの視点で綴った10篇の連作集。

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)


「本当の恋」をしたことのないニシノくんは、ふんわりと上品で美しくやさしく、それでいて暴力的に女に恋をしていく、のだが、最後には必ず女の子たちに去られてしまう。それは、本心からの恋から上手に逃げ惑う隠れ蓑の恋だった。「女の子をきちんと愛せない」ニシノくんは、半端なくかっこよく、女の子たちも、こいつに本気で恋をするとヤバイ、と瞬間的に思うや否や去っていってしまうのだ。シスコンとか、インセクト、っぽいニュアンス、そして何より、寡黙にしっとりと、それでいて情感的に語られるニシノ君に対する女の子たちの気持ちが小気味良い。さらさら読めます。江国香織とか吉本バナナ好きな人は素直に世界に入ってけるかな。推理小説とか、歴史小説しか読まない男臭い読者にもお勧め。


279P


総計 2534P