読書日記 「悪童日記」 アゴタ・クリストフ
- 作者: アゴタクリストフ,Agota Kristof,堀茂樹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1991/01
- メディア: 単行本
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<戦争>によって、<大きな町>から<小さな町>へと疎開せざるを得なくなった双子の兄弟。「ぼくら」は祖母の家に疎開することになる。双子を取り巻く環境は日々悪化していくばかりであるが、彼らの知性で、そして子供特有の冷酷なる倫理観で、何事も淡々とこなしていく。「火垂るの墓」の様な世界を期待してはいけない。「ぼくら」に会って強かに、物事を冷静に見なくてはいけない。強くならなければいけない。人の弱さを知るたびに、強くならなければいけない。
極限まで「心理描写」や「不確定な書き方」を避け、美文を排除した、まるで戯曲のト書きの様なプロット。戦争、強姦、安楽死、性行為、労働、計画的虐殺、孤独、貧富、飢えといった重苦しいテーマを各章単位で寓話的に問いかける。だが、そこにはあくまで筋書きだけが記されていて、読者はその行間に心を震わされる。結末を知るまでページを繰るスピードは衰えないし、双子の「ぼくら」が心に巣食うてしまったかのような作品である。
深く考えてはいけない。ただそのプロットに従って、空白に浮かび上がる悲哀や祈りに心を麻痺させて眠ればいい。そうしたらもう一度「ぼくら」はそこに現れる。
フランス文学らしくないところもフランス文学らしい「悪童日記」
すぐ読めるから、ほんとうに、読んでみてください。「ぼくら」に会って下さい。
244p
総計 3468p
今日の回文:煮汁、痔に
いや、絶対しみるから。