読書日記 「罪と罰」 ドストエフスキー


罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

罪と罰〈下〉 (新潮文庫)

罪と罰〈下〉 (新潮文庫)

ロシア人って、こんなに喋るんですか、っていうくらい登場人物の独白が長い!3ページくらい喋りっぱなしです。罪と罰。まさに、文学巨編でした。


「世界の人々は凡人と、非凡人に分けられる。非凡人は凡人を犠牲にしても世界を改良することが許されるし、そのために流される血は正当化されるべきものである。歴史の偉人達はその一歩を踏み出すことを恐れず、それについて悔恨することはなかった。」


主人公ラスコーリニコフは、このような思想を抱き、戦争を正当化し、さらに自らの殺人を正当化しようとした。「一人の醜い汚れた油虫の様な金貸しの老婆」を殺して、その金を奪い、それを「非凡人」であり、「輝かしい英知の未来」を持つ自分自身のために使うことは、正義の行為だとみなされる。この「優れた」恐ろしい思想に執りつかれてしまったラスコーリニコフは、精神を病み、様々な事件に巻き込まれていくが、一人の女ソーニャと邂逅し全てが徐々に変わっていく。自己犠牲を糧として生きる彼女の直向なラスコーリニコフへの愛に打ちのめされた彼は、ようやく人間らしい愛情に触れ、自らが犯した罪を悔恨し、罰を身を持って贖うのであった。


母親に自らの愛情の不変を訴える場面、ソーニャの愛情に慧眼する場面は、体中が震えます。心が咆哮をあげます。やはり、名著です。今まで読んだ小説の中でも、5本の指に確実に入ります。これが文豪と呼ばれた人の著作です。安っぽい感動ではなく、そこには連綿と続く人間的な混乱や思想の崩落、愛情の萌芽、死への恐怖が様々に混沌と介在してつづら織りになっています。読まなければいけない。読みすすめなければいけない。そんな小説でした。


長期休みにでも読んでください。少しずつでいいから、この文学的興奮を味わってください。


990p

総計5326p