07読書日記2冊目 「岬にての物語」三島由紀夫


岬にての物語 (新潮文庫)

岬にての物語 (新潮文庫)

最近の入試英語の長文化傾向と、僕の日記の長文化傾向の相関関係について2000字くらいでレポートを書こうかと思いましたがやめました。


三島由紀夫の短編です。彼の幻想小説は、雅語調で書かれていたりと完成度が高いですね。やっぱり三島も文学史上に燦然と輝く作家であります。三島の場合、抽象概念、つまり「言葉を持っている蓋然性は、人間の負い目である」という理論を抽出したような小説群です。表題作「岬にての物語」は早熟の少年が目にしてしまった、少女と青年の駆け落ちを題材にして、至高的な愛、すなわち現実とは一線を画す愛への憧憬を甘美に描いてあります。しかも、少女と青年の微笑は似通っていた、とあるようなインセスタス(近親相姦的な)愛という限りなく美しい禁忌の事象を描いていたのでした。他にも「椅子」などの秀作が揃っています。


先日、村上春樹の短編集「パン屋再襲撃」を読みましたが、そこで扱われているテーマとは、これほどか!というくらいかけ離れたものですね。

ところが、本書の最後の短編「月澹荘綺譚」には視姦でしか満たされない貴族の男が、一人の白痴の田舎娘を捕まえてきて、召使に彼女を犯させて、自身はそれを見続けている、というシーンが出てくるのですが、これは、村上春樹の長編小説「ねじまき鳥クロニクル」にも出てくるテーゼなんです。これは意外な一致。村上春樹が三島を読んでいたことがあるのか(本人は日本文学には全く染まらずに生きてきたといっていますが)、偶然なのか、面白いですね。こういうのって。


あ、また長文気味やわ。


330p

総計519p