07読書日記21冊目 「斜陽」太宰治


この世の中に、戦争だの平和だの組合だの政治だのがあるのは、なんのためだか、この頃私にもわかってきました。あなたは、ご存じないでしょう。だから、いつまでも不幸なのですわ。それはね、教えてあげますわ、女がよい子を生むためです。


斜陽 (新潮文庫)

斜陽 (新潮文庫)


太宰とは、本当に「美しいもの」へ憧憬を抱き続けて、それを叶うことのできなかったのだと思う。


ストーリーを組み立てていってカタルシスや衝撃を与える作家ではなくて、一言一言の鋭い言葉で読者の”何か”を抉り取っていくような作家だと思う。


グレン・グールドが弾く、狂いたてるようなバッハのフーガ、ボレットの弾くリストのハンガリー狂詩曲を聴きながら、読んでいると、トリップしたような気持ちになって恐ろしい。


直治がその遺書の中で言うように”いつも、くらくらめまいをしていなけらばならなかったんです”というような生き様が、強烈にフラッシュバックされるのである。


206p

総計6101p