07読書日記22冊目 「冬の旅」立原正秋


三十年位前に新聞連載されていた小説。義兄に母が陵辱されそうになっているところを、主人公が阻止し、誤って義兄を出刃包丁で刺してしまう。あくまで、冷徹に、それこそハードボイルドに自分と言う一生を見つめ、強さとは何なのか、意志とは何なのかを問うた作品。とても読みやすくて、三日で読んだ。だけど・・・

冬の旅 (新潮文庫)

冬の旅 (新潮文庫)


最後に、主人公の友人が交通事故で死ぬのが、あざとかったし、主人公もおそらく死ぬであろうエンディングがこの小説の価値を半減させた。全く面白くなくなってしまうような小説にしてしまった。新聞小説の制約もあったのだろうが、こういうしょうもないことはしないで欲しい。折角、それを除けば、主人公のひたむき過ぎるくらいひたむきな自己省察、絶対的な孤独、それらが上手く描かれていて、心を動かされるものだったのに。本当に残念。


637p

総計6738p