07読書日記25冊目 「沈黙」遠藤周作


島原の乱鎮圧後の日本に、隠れキリシタンとして信仰を続ける日本人のために、信仰の復興を掲げて密航した一人のポルトガル人宣教師の話。

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)


背教感・神の存在・そして、神の沈黙、西洋と日本の信仰的、思想的隔絶などを描いた作品。一人称と三人称が混然とした文体は、吉本隆明をもって「通俗的」と言わしめたが、その通俗性に私は惹かれるし、信仰とは民衆のもとにこそ存在しなければならないと願った宣教師ロドリゴを表現しているように感じた。壮絶な筆致をもってグイグイと推し進められるストーリー、信仰か背教かの二者択一の選択を迫られる主人公の心境はキリスト者ではない私にも共感できるものだった。特に後半の、先行して日本で布教活動を続けてきたが唾教してしまった宣教師フィレイラとの会話は、こちらの息することをも拒む強さがある。自らの信仰のために、それは日本にいるキリシタンのために行っているはずの行為が、それでいてキリシタンたちへの迫害を激化させるものであるとしたら。


神は、こうまでもあなたのために祈り、身を捧げる民を、かくも苦しめ続ける現実に対して、どうして沈黙を貫くのだろうか。


この命題は、そのまま現代に応用することができるとは思うものの、どうしても私がキリスト者ではないからか、それとも日本という国の無宗教性がそうさせたのか、この小説に心を突き動かされ、身も震えるといった衝撃を受けなかった。どこか遠くの話のようにも、加えて、第三者的であるようにも、感じてしまったのも確かなのだが。


p312

総計7632p