07読書日記35冊目 「「雨の木」を聴く女たち」大江健三郎
久しぶりに大江ケンちゃんです。やっぱり好きです。エピソードを重ね合わせ続けて、現代の我々に迫る危機をどう越えていくのか、その危機を彼はpredicamentと表現しているのですが、そして、作者の影を持ち合わせた「僕」が一体アクチュアルな姿であるのか、フィクショナルな姿であるのか、様々に交錯していきながら、一つの物語を形成する手法は、とても共感が持て、さらに心を動かされるようなものでもあります。
『夜なかに驟雨があると、翌日は昼過ぎまでその茂りの全体から滴をしたたらせて、雨を降らせる』という「雨の木(レイン・ツリー)」を全体のメタファーとした連作短編集なのですが、もはやそれぞれの短編の間に連関があるために、読了し終えたときには、長編を読んだ気になったのですが。
一般的に、戦後民主主義者として、あるいはユマニストとして認知されているはずの作者ですが、彼はその著作の中では、ユマニストというより、あくまで病的で内省的な人格を持ち、その周りに流れる濃厚な時間に逆らうように夢想し続けるのです。
最初はどうしようもなく退屈に見える展開ですら、いつの間にか読者の心的風景すらも巻き込んで怒涛のように回転していくストーリーテリングには、嫉妬の気持ちと、感嘆の気持ちが入り混じるのでした。
315p
総計10174p
あ、一万ページ超えた!
今年中に本を百冊読む計画・・・できるかな苦笑
- 作者: 大江健三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1986/02/27
- メディア: 文庫
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