07読書日記37冊目 「インディヴィジュアル・プロジェクション」阿部和重

インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)

インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)


面白い!文学の楽しみが、まさに詰まった素晴らしい小説。きっと、阿部和重は「ロリータ」を読んだに違いない(あるいは、「ロリータ」を、またマルケスらを読んだ筒井康隆や大江らを読んだに違いない)!


文学の楽しみとは、解釈の自由である。抽象性の強い作品であれ、そうでない作品であれ、その時々の読者の環境に応じて様々に「読み」が変化する類のものである。この「インディヴィジュアル・プロジェクション」はまさに、その種の優れた小説の仲間入りを果たしている。


スパイ養成所を飛び出し、渋谷で映写技術師をしている「オヌマ」が、次第に暴力の渦と、狂気の空間へとまさに導かれていく・・・


と、一見荒唐無稽そうな内容だが、この話をミステリだと取ることも出来れば、アイデンティティの拡散を切に捉えた実存小説の一種だとも見ることが出来るだろうし、それは「J文学」などでは、少なくとも括れない「世界文学」ですらある。ユーモアに満ちた「遊び」の部分と、ハードボイルドの世界を触れ幅激しく揺れ動くこの小説に完全にやられた。


阿部和重にはまりそう。どうしよう。


206p

総計 11003p


PS アメリカ楽しんでくるっちゃ。