07読書日記55冊目 「日はまた昇る」ヘミングウェイ


日はまた昇る (新潮文庫)

日はまた昇る (新潮文庫)


第一次大戦後、戦線に送り込まれた若者達が得た喪失感を体現した作家達がいた。ロスト・ジェネレーションと呼ばれる彼らの多くは、放蕩の生活を送り、短命な一生を終えることになる。ヘミングウェイは短命ではありはしなかったが、常に自らの”喪ったもの”を問い続けてきた作家であり、最終的には猟銃自殺でこの世を去った。


日はまた昇る」には、喪失感と放蕩、そして不能と快楽、それらは一見してかけ離れているようではあるが、その実、精神的な根幹においては密接なつながりを持つ、そのような大戦が我々に担わせた責苦を描く。


老人と海」も、「キリマンジェロの雪」も読んだが、「日はまた昇る」が一番しっくり来た。深い部分ではやはり「ギャツビー」と精神性を共にするような、同時代性の強い作品であろう。ハード・ボイルドといわれる文体には、感情を吐き捨てるような簡潔性があるといわれているが、その文体から感じられたのはむしろ失望、絶望、喪失、不能、これらのことであった。


それにしても、主人公が性的不能者であること、そんなに書かれてないのに、それがすごい。


354p

総計15921p