08読書日記4冊目 莫言「赤い高粱」


赤い高粱 (岩波現代文庫)

赤い高粱 (岩波現代文庫)


中国現代文学を読むのは初めてだが、どれほど、豊潤で濃厚な世界観が溢れ出る事だろう。マジック・リアリズムの手法や、あるいは大江の言葉を借りればグロテスク・リアリズムを用いた、中国の架空の農村部で起きる目くるめく家族の伝説。


高粱とは、トウキビの類の野菜。赤い高粱の畑で、土と血と性の香りが満ち満ちる。高粱を醸造して酒を造っているのだが、その酒の芳しさも漂ってくるようだ。


現代文学は「笑い」をあるいは「語りの強さ」を照準に入れた。時間軸を行き来する物語の中で、泥臭いほどの人間性が、あるいは「生の求め」が描かれる。


莫言は、文化大革命期に紅衛兵として農村に入った世代の人だ。中国共産党の文化の弾圧、それに屈せずに書き続ける、ということを試さねばならない国、中国。


政治がここまで物語、すなわち情熱と裏切りの筋書きを持ったのもこの国くらいだ。そんな国の文学が哄笑的で、広大で、濃厚な物語を紡がぬわけがない。ラテン文学にも通じる濃密さ・・・


328p

総計1173p