08読書日記20冊目 「遠い声 遠い部屋」カポーティ

遠い声 遠い部屋 (新潮文庫)

遠い声 遠い部屋 (新潮文庫)

アメリカ文学続きである。まさに破滅型の生活を送った最後の作家の一人、カポーティ。アル中でヤク中でホモの、カポーティ

全編が詩であるような、美しさをたたえた小説である。文学や芸術に欠くことのできない美を保つものである。

失われた過去にすがって生きる大人は、鮮やかでうつろいやすくそれゆえに美しい事物を鮮やかな好奇心で追い続ける子供にとって、忌避すべきものである。しかし、時を生きてきたのだという心からは、子どもでさえも逃げる事が出来ない。子どもの頃に見ていたものを捨てて、我々は大人になっていく。

『彼は行かねばならないことを知っていた――恐れず、ためらわず、彼はただ庭の端でちょっと立ちどまっただけだった。彼はふとそこで、何か置き忘れてきたように足をとめ、茜色の消えた垂れ下がりつつ青さを、後に残してきた少年の姿を、もう一度振り返って見るのだった。』

288p
総計5382p