08読書日記22冊目 「シッダールタ」ヘッセ (訳:高橋健二)

シッダールタ (新潮文庫)

シッダールタ (新潮文庫)

仏教的な涅槃に至ることをヘッセは望み、そのために修行を続けてきたらしい。簡潔な言葉で魂の深いところまで掘り下げようとする文体は華麗でもあり、壮絶でもある。

彼は宗教的体験、没我一如の境地、時間の偏在を文学的追体験の効果をねらって、この本を書いたのだろう。シッダールタの言うように、知識は授ける事ができても、知恵は授ける事ができず、自らが体験するしかないのである。その意味で、僕は読んでいて、ヘッセが至ったであろう境地になど到底たどり着けなかった。そのような境地があることを”知った”だけである。

「知識をむさぼるものよ、意見の密林に対し、ことばのための争いに対し、みずからを戒めよ。」

「おん身は賢く語ることを心得ている、友よ。あまりに大きい賢明さを戒めよ!」

「知識は伝えることができるが、知恵は伝えることができない。知恵を見出すことはできる。知恵を生きることはできる。知恵に支えられることはできる。知恵で奇跡を行うことはできる。が、知恵を語り教えることはできない。」

164p
総計5667p