08読書日記29冊目 「共産党宣言」マルクス・エンゲルス

マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)

マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)

ヨーロッパに幽霊が出る、共産主義という幽霊である。

デリダであったか、ドゥルーズであったかが、「マルクスの亡霊」が出る、と言ったらしいが、当時熱狂的に読まれたであろう「宣言」は、現代のコンテキストに身を置く私が読んで、非常に悲嘆したくなるような気持ちになったのである。

労働者はもはや自らが疎外されていることにすら気を配らず、世界を覆っていた大きな物語は潰えた。崩れ去った瓦礫の下で、まだマルキシズムは生きつづけえるだろうか。それは私の浅学では、感知し得ないところでは有るが、京都大学においてそこにまだすがろうとする者のいる気持ちも理解できる。

この書は、かつて自らの信奉する思想のために全てを投じた時代があった、そしてそれらは全て資本主義という欲望を燃料とする強大な機械に飲み込まれてしまった、という感慨を、感傷とともに私に伝えた。マルクスが最後に、全国の労働者を鼓舞するために叫ぶ声が、虚しくこだまする。

――支配階級よ、共産主義革命のまえにおののくがいい。プロレタリアは革命においてくさりのほか失うべきものをもたない。かれらが獲得するものは世界である。
   万国のプロレタリア団結せよ!

125p
総計7745p