08読書日記50冊目 「心はどこへ行こうとしているか」大澤真幸・町澤静雄・香山リカ

心はどこへ行こうとしているか―クロス・トーク!社会学vs精神医学

心はどこへ行こうとしているか―クロス・トーク!社会学vs精神医学

社会学者・大澤真幸精神科医二人による対談。主に90年代後半に起きた、オウム、サカキバラ事件を、分野横断的に分析している。

大澤の示唆によるcommitのあり方は興味深い。あらゆる規範から解放された真に「自由な」選択、というものは困難であり、それは自己が選択する以前にすでに選択されていたことにしか本質的にcommitできないことに類似している。本質的なcommitのあり方、というのは恋愛がその典型である。さらに、このあいだの広瀬との電話で彼が考察していた事だが、commitはアンガージュマンの意味で用いられる事が多いが、しかしcommitという単語の持つcollocationにはsuicide、error、crimeなど悲劇性を孕むものが多い。ラテン語の語源ではput into costodyという意味であり、costodyとは監視、監禁、拘束を意味するのである。結局これらが示唆するのは、commitとは真に自己選択的になされるものではなく、それゆえに自らの志向に関わらない必然性を帯びた現実、カオティックな現実に、身を滅ぼされるまでに、関与し続けることに他ならないであろう。

対談のレベルとしては、大澤さんの文法が、二人とあんまし噛み合ってないような気がして、というか、精神科医的分析(フロイト的、ラカン的?)が発揮されていたとは言いがたい。むしろ、柄谷なんかは、こういう少年らに顕著である、「倫理」の虚構性が崩壊していくプロセスをどうみているのだろうか。

大澤さん初心者にもわかりやすい本であることは、確か。そんなに面白くはない。

243p
総計13371p