08読書日記51冊目 「逆接の民主主義」大澤真幸

大澤月間です。

「不可能性の時代」と合わせて読むと、相互補完的に論理の足りない部分が組み合わされて、まだ(強調)わかりやすくなると思う。

しかし、本書はかなりラディカルな提案を含んでいる。大まかに語るならば、
1.憲法九条を護持するために北朝鮮民主化しなければいけない。そのためには、日本が北朝鮮からの難民を無制限に受け入れるべきだ。
2.自衛隊は端的に言って憲法九条に違反している。ゆえに自衛隊を解体し、世界のあらゆる貧困・紛争地域へと(NPOのように)飛び立って、そこで直接的な贈与・支援活動を行う部隊を作るべきだ。(その場合、その部隊はその地域の人々らに徹底的なcommitを行う)
3.民主主義においては、討議のテーブルにつこうとしない<他者>の存在を、その合意形成プロセスに組み込めないために、排除するしかなくなる。そこで、闘争関係にあるAとBの媒介者<MA1、MA2>と<MB1、MB2>を採用する。AとBはそれぞれ二人の媒介者にAとBの「価値観」の根源的な理由、それぞれがそれぞれの対立するような選択を志向する根拠を説明する。そして、それぞれの媒介者はその言葉どおりに、上部機関である委員会に、AとBの思想を伝える。そしてその委員会で調停が行われる。
4.民主主義における欺瞞は明らかである。その欺瞞性(すなわち多様な意見を、一つの意見として、それを普遍的真理であるかのように代表する意見へと集約するという欺瞞)を解決するために、むしろ逆接の民主主義を形成すべきである。すなわち、徹底的に少数者である意見、投票プロセスにおいて排除された意見、<敗者>の意見をこそ、その集団の代表的意見とすべきである。


これだけ読むと、かなり誤解が生じそうなので、これを批判する人は、ちゃんと本書を読むように。新書という制約からか、論理がぶっ飛んでいるところ、ついていけないところ、もあるが、手広く自由に、議論の踏み台となるような、「理念型」を提示している点で、非常に面白い。個人的に突っ込みどころは、いっぱいあるが、乗せない。というのも、めんどくさくなってきたからだ。

繰り返すが、『不可能性の時代』(これが中々売れているらしい!)と併読すべきである。

236p
総計13607p