08読書日記68冊目 「発言」サイード他
- 作者: 中山元
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2002/01
- メディア: 単行本
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9.11テロについては、日本でも盛んに新聞紙上をにぎわせてきたが、偉大な思想家による論評は少なく、結論的に反米か親米かを問うだけの論議に終始したものも少なくない。しかし、本書の思想家、とくにサイードやジジェク、デリダに言わせれば、アメリカの責任をせめてアフガンに同情を寄せることでも、アメリカを無辜の民だとみなしアフガンを絶対悪だとみなすことでも、そのどちらでもなく、またそのどちらにも立脚した弁証法的な立ち位置が要求される。
9.11テロは、間違いなく覇権大国アメリカのhegemonyを揺るがした。みんな、うすうすは気付いていたパクス・アメリカーナの虚構性が、ツインタワーの崩壊とともに、露になったのだった。おそらく、本書の思想家はこのことについてアクチュアルにかたってはいないが、現在で起きているサブ・プライムから原油ショックにいたる流れは、9.11以後のアメリカの覇権の揺るぎを引き継ぐものに違いない。現に、サブ・プライムの主たる原因は、アラブ諸国が石油をアメリカへ売ろうとしなったことへ由来している、との論説もある。
本書の中でとりわけ興味深いのは、ハーバーマスの宗教の声に耳を傾けるという呼びかけ、ジジェクの現状分析、デリダの短いが喚起的な指摘である。
247p
総計18813p