08読書日記92冊目 「啓蒙の弁証法」ホルクハイマー、アドルノ

啓蒙の弁証法―哲学的断想 (岩波文庫)

啓蒙の弁証法―哲学的断想 (岩波文庫)

これまで読んだ本の中で、最もわけの分からなかった本の一つ。

自然(=神話=反復)を支配するために用いられてきた理性(=啓蒙=唯一性)が、むしろその進化線上で、自然(=画一化=全体性=《真理》)と堕してしまう、という啓蒙自身の弁証的展開を著述した、ということは概ね理解した。サイードの『知識人とは』で述べられていたように、真理と偽るプロパガンダについて否定し抵抗する力を、個々人が持たねばいけない、それが理性の内在的判能力である、という喝破も勇ましい。

非常に難解であり、特に付すべき感想などは、それを書いてしまうだけでおこがましい気分になり、憂鬱になるが、しかし、しかし、しかし、しかし、本書はわたしが大学生として、この本を読んだ、と胸を張って言える、そして何度でも、どの部分からでも読み返すことを迫る本であることは確かである。

―こうして哲学は、現存するものに対して、疎遠であると同時に深い理解を持つ。哲学の声は対象に属しはするが、その意のままにはならない。哲学の声は矛盾の声であり、それなくしては、矛盾は声を立てることもなく、押し黙ったまま勝ち誇ることであろう。

549p
総計27156p