08読書日記98冊目 「日々の泡」ボリス・ヴィアン

日々の泡 (新潮文庫)

日々の泡 (新潮文庫)

ここに出てくる登場人物はほとんど阿呆だが、実際、この本を読みながら死にかけた俺がいちばん阿呆であるので、なんとも言えない。

最初は読みにくいと感じる人もいるかもしれないが、後半、急速に人物像が頭に描けるようになってきて、最後には圧倒的な悲痛さを心に抱かずにはいれない。難しい言葉はない。ただ、淡々と悲痛さが露になってきて、最後にはどうしてひとは(というより俺は)恋愛をせずにはいられないのだろうか、このように無益なことであるのに、という切実な気持ちになる。

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『「ゆるしておくれ、クロエ」コランは言った。「ぼくは畜生だ」
彼は近づくと彼女をひき寄せた。あわれにも呆然としている眼にくちづけると、ゆっくりと重苦しく鼓動する彼女の心臓が彼の胸の中で感じられた。

これだけで、ご飯何杯でもいける気がする。

302p
総計28791p