08読書日記104冊目 「革命について」アレント

革命について (ちくま学芸文庫)

革命について (ちくま学芸文庫)

アレントは今年で一番尊敬するようになった政治哲学者だ。

「革命について」という題だけ見ると、よく左翼系思想家にありがちなフランス革命の偉大さを喧伝するような内容を想像するし、僕ら冷戦以降の時代に教育を受けてきたものからすればロシア革命文化大革命を考えるが、本書で鋭く分析されているのは「アメリカ独立革命」である。世界史の授業ではあまりアメリカ独立革命を「革命」としては教えないし、その先見性についても云々しない。

さて、アレントが「革命」について定義するところによればそれは自由の創設(constitution of freedom)を目的とするものである。自由とは権力からのliberationではなく、ここが大事なところだが、自分が自分の意見を公的な場で発言し承認されることによる公的幸福を享受するfreedomである。フランス革命においては群集はliberationを求め、アメリカ革命においてはfreedomをジェファーソンらは求めたのである。この自由というのは所謂共和主義的自由である。

まだ重要な論点はあるが、思想史的に見てもこの「革命について」は議論喚起的であるし、ただ哲学の本としても面白く読める。アレントの、どの党派性にも靡かない議論の態度は良い。事実彼女は社会問題などの利得調整を行う政党ではなく、中間団体(ともちがうか)のような市民のspace of appearanceの場としての評議会を高評価するのである。

マルクスブリュメール」、アレント「革命について」と読んできて、トクヴィルあたり、あるいはハーバーマスに再び戻ってもすごく面白そうな流れの読書だと思うね。

478p
総計30584p