2008年読書のまとめ

今年はそれなりに本を読めた。一月平均10冊を読んで、合計120冊読み終えた。また来年もう一回読み返してみなあかん本も多々あって(『公共性の構造転換』、『啓蒙の弁証法』、『徳・商業・歴史』など)、うーん、という感じもしないではないけど、まあ年始に立てた目標は達成できたかな、という具合だ。

何か、今までの自分が幼稚臭すぎて嫌になるぐらい、今年は色んな世界があることを知り、そしてそこにちょっとだけ足を突っ込めた気がする。どこまで深めれるか分からんが、とにかくやってみるかね、来年は。そういう意味で、きっかけの年だったよ、2008年は。


文学も思想書も読んできて、今年はバランスが良かった。比率的には半分が思想書だったので、研究者になろうと思えたのも、そのおかげかも知らん。ただ、まだ研究者になるかどうかは分からん。そろそろ決めなあかん。

今年読んでおもろーやった本を文学畑、思想畑から10冊ずつあげてみる。ただ、順位付けはかなり困難なので、とりあえず選ぶだけ!

文学
1『ナイン・ストーリーズ』 J.D.サリンジャー
2『不滅』 ミラン・クンデラ
3『かもめ・ワーニャ伯父さん』 アントン・チェーホフ
4『雪』 オルハン・パムク
5『万延元年のフットボール』 大江健三郎
6『こころ』 夏目漱石
7『親指Pの修行時代』 松浦理恵子
8『アメリカの夜』 阿部和重
9『取り替え子』 大江健三郎
10『ベンドシニスター』 ウラジーミル・ナボコフ

1と2はどちらも現代世界文学を代表する作家だが、1でいうところのスノッブと、2でいうところのキッチュの概念って、そう違わないんじゃないだろうか。どちらも大好きである。読書をしていると、いつの間にか通奏低音として流れている主題を敏感に受け取ってしまうことはよくあって、「語り」と「沈黙」、あるいは、「物語」と「出来事」の間の深淵を5,6,8には感じ取った。番外編として、今年、生き方を変えざるを得ないほど衝撃を受けたのがミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』である。言わずもがなだ。そのほかにも、谷川俊太郎宮沢賢治、John.Lennonにも影響を受けた。それは計り知れない。

思想
1『言葉と物』 ミシェル・フーコー
2『憲法とは何か』 長谷部恭男
3『世界共和国へ』 柄谷行人
4『徳・商業・歴史』 J.G.A.ポーコック
5『人間の条件』 ハンナ・アレント
6『危険社会』 ウルリヒ・ベック
7『知識人とは何か』 エドワード・サイード
8『不可能性の時代』 大澤真幸
9『恋愛の不可能性について』 大澤真幸
10『公共性の構造転換』 ユルゲン・ハーバーマス

研究領域として政治思想史なり、「公共哲学」なりを扱おうというきっかけとなったのが10。いつ読んでも、前回読んだときは何もわかっていなかった、と気づかされる。さらに、今年お世話になり、ヒロイックなまでに魅了してくれたのが大澤真幸の諸作である。特に9は難解だが、自己と他者のメカニズムを社会学的に分析していてスリリングであり、僕が周りの人に語った話はもっぱらこの人からの援用である。上では二作しか挙げなかったが、『逆接の民主主義』や『文明の内なる衝突』、『資本主義のパラドックス』などにも読書の楽しみをもらった。また、研究の話としては、共和主義ということを知ったのは4である。ポーコックという天才を、ゼミの教授の導きにより知れたことは、感謝しつくして余りある。アレントもその線で読めば、5も良いが『革命について』なども面白い。