09読書日記1冊目 「隠喩としての病/エイズとその隠喩」スーザン・ソンタグ

隠喩としての病い・エイズとその隠喩

隠喩としての病い・エイズとその隠喩

スーザン・ソンタグといえば、アメリカのリベラルな批評家として有名な人物である。病がもつ隠喩と差別の恣意的な癒着を暴いた本。

ディスクルスとして病がもつ隠喩というのが、社会的な差別や、病の克服には無関係なレッテル張りとなっていることを批評している。例えば、結核の隠喩としてあった、自身の内面の抑圧気質、内面の清廉さというものが、結核が克服されるということによって癌と狂気にとってかわられる。癌は内面の欲求の暴発の兆しとして表われるとされ、その人自身の内面性が取りざたされる。結核にしろ癌にしろ、どちらも社会的コンテクストの中では死に直結する病として表われる。それは個人的な性格や出生、暮らしをレッテル貼りするものである。その逆にペストや赤痢などの伝染病は大衆性として現れるため個人的な悲劇としては隠喩機能を持たない。やがて、癌がエイズにその死の隠喩の座を譲る、というのが本書の要である。病自体と、病の隠喩を切り離して、ただ物理的な処置を受けることで回復へと至るしかない、ということを患者は知るべきである。

304p
総計304p