09読書日記6冊目 『共和主義と啓蒙』田中秀夫

共和主義について、その代表的思想史家であるポーコックについて扱った本。ポーコックの描いたcivic humanismの変遷とその研究方法論について、俯瞰的に理解が進む。後半の「啓蒙」パートでは主にスコットランド啓蒙の思想家らが扱われている。政治思想あるいは政治哲学が死滅してしまった、と囁かれる今日にあっても、自然法思想における自由に対立するように「市民的徳」の重要性を説き続けたスコットランド啓蒙思想家(スミス、ヒューム、ミラーなど)らの古典性は失われていない。

ただ、田中先生はあくまでも思想史研究者であって、思想家ではない。それは本書の魅力を損なうということではないのだが、物足りない気もする。

いかに政治的、社会的腐敗(それは多くは高度資本主義的グローバリゼーション)にたいして対抗的な思想を練っていくのか、これが現代に積み残された課題であることには間違いがないのだ。

232p
総計1565p