09読書日記13冊目 「欲望という名の電車」テネシー・ウィリアムズ

欲望という名の電車 (新潮文庫)

欲望という名の電車 (新潮文庫)

テネシー・ウィリアムズの戯曲を読むのは、『ガラスの動物園』に続いて二作目。『ガラス―』でもそうであったが、彼の戯曲では喉もとを焦がすようなジャズの音楽が、読んでいるあいだに鳴り響く、そのような感覚がある。そしてそれは害して痛ましいほど、狂おしいほどの想像力をかきたてるのである。というか、彼の戯曲は実に視覚的である。

アメリカの香りがこれほどまでに感じられる戯曲作家もいるまい。古き良きアメリカ映画を見ているようでもあるし、階級人種ごったまぜのなかで、泥臭くたくましく生きる人らの狂気的な悲劇が、そこにはある。あくまで階級的な美意識に取り付かれ自分を繕うことで生きてきた―その結果、最後は顕わになった自らを直視できずに狂ってしまう―ブランチ、暴力的な夫に対して惨めな生活を送るステラ、その夫で過激なまでに動物的な<欲望>の持ち主であるスタンレー。彼らは、<欲望>という名の電車に乗って送られてき、<極楽>という町に住む者らである。彼らは、ヨーロッパ的な虚偽意識をかなぐり捨て、極めて資本主義的な<欲望>の奴隷となって、動物として生きるものらである。そこでは誰もが「どんなことになろうと生きていかなきゃならない」のである。

221p
総計4452p